日本固有の商習慣に対応した ERP「HUE」などの提供を通じて、日本企業の DX を後押しし続けている株式会社ワークスアプリケーションズ。顧客から「システム インフラとして Azure を使いたい」という要望が増えていたことから、2022 年にクラウド インフラとして Azure を採用することを検討、その翌年には Azure 版の HUE と HCC(HUE Classic Cloud) をリリースしています。その一方でマイクロソフト製品との相互連携にも取り組んでおり、既に Microsoft Dynamics 365 や Microsoft Teams との連携を実現。さらに、Azure OpenAI Service や GitHub Copilotの活用、Copilot for Microsoft 365 との連携も積極的に推進されています。ここで重要なキーワードになっているのが、顧客を「AI-Ready」にしていくこと。日本企業の生産性を極限まで高め、働くことの意味を変えていくことが目指されています。
日本企業の声に応えるため Azure をクラウド インフラに採用
「企業の生産性を高め、企業価値の拡大に貢献したい」。このような想いから、日本の大手企業の業務プロセスに対応する「業務網羅性の高い ERP パッケージ」を提供しているのが、株式会社ワークスアプリケーションズ (以下、ワークスアプリケーションズ) です。主力製品の「HUE」は、導入実績の中で、各社から受けた要望を一切の個別アドオン/カスタマイズなく標準機能に取り込んできた「お客様と成長し続ける」ERP。すべての要件を標準機能で実現しているからこそ、無償バージョンアップでトレンドに追従できます。また、豊富な機能を目的に応じて手軽に利用できるグループウェア・業務アプリ開発プラットフォーム「ArielAirOne」も提供。基幹システムの TCO 最適化を通して攻めの DX へのリソース配置を後押しすると共に、DX そのものの実践を支援する取り組みも、積極的に推進しています。
「HUE は日本の大手企業のために作られた国産の ERP であり、2,200 社以上の導入実績に基づいた機能網羅性に加えて、ユーザーの利便性を追求した先進的な機能群によって、日本企業の働き方を変え続けていきます」と語るのは、ワークスアプリケーションズで取締役 執行役員を務める宮原 雅彦 氏。日本企業独自の業務内容とシステムの標準機能でカバーできる業務内容とのギャップがきわめて小さいため、企業個別のカスタマイズ/アドオン開発を行うことなく、パラメーターの設定のみで大手企業の業務運用を行えることも、大きな特長だと説明します。「当然ながら、お客様である大手日本企業のご意見やご要望は、継続的にヒアリングして取り入れています」。
その中で「2020 年ころから増えていたのが、システム インフラとして Azure を使いたいというご要望でした。この声に対応するため、2022 年 4 月には Azure の採用検討を本格的に開始しました」と言うのは、ワークスアプリケーションズ プロダクトマネジメント本部 本部長を務める外村 卓也 氏です。
「Azure は以前より社内で利用していましたが、マニュアル類や事例が豊富にあり、サービス進化のスピード感も高く評価していました」と言うのは、ワークスアプリケーションズ オペレーション本部 HCC事業部でマネジャーを務める小松 正浩 氏。オペレーション本部とは、HUE などを導入する顧客のクラウド/インフラ運用を代行する部署だと説明します。
「既に経験があり情報も豊富な Azure であれば、HUE などのインフラとして利用するのも、それほど大きなハードルはありません。またマイクロソフトには、Microsoft Teams や Dynamics 365、Azure OpenAI Service といった先進的なサービスが揃っており、これらとの連携が行いやすくなることも、大きな強みになると考えました」 (小松 氏)。
マイクロソフトとの協業も強化し、マイクロソフト製品群との相互連携を推進
2022 年 11 月には、Azure 上での運用管理方法を明確化するための PoC をスタート。同年 12 月には Azure 上で稼働する HCC の開発が始まり、2023 年 4 月にリリースされています。さらに HUE の開発も行われ、2023 年 7 月にリリース。主力製品である HUE/HUE Classic が、いずれも Azure の上で動くようになっています。
「Azure はドキュメントだけではなく資格試験も充実しており、エンジニアのラーニング パスが整備されていることも、開発者にとっては大きなメリットです。また、開発者テナントに無料で追加できるサブスクリプションも用意されており、PoC が行いやすいことも魅力の 1 つです」と語るのは、ワークスアプリケーションズ ERP事業本部 会計コア製品 開発部でマネジャーを務める菊地 洋 氏です。
このような Azure 版の HUE/HUE Classic の提供に加えて、マイクロソフトとの協業も強化されています。2023 年 6 月には、AI で経営レベルの意思決定を支援するため、次世代型 ERP 開発を進めていくことを発表。その中にマイクロソフト製品との相互連携を、日本マイクロソフトと共に促進していくことが盛り込まれているのです。
その第一弾として行われたのが、HUE Asset と Dynamics 365 との連携です。HUE Asset とは日本国内独自の業務要件に対応した固定資産管理システムであり、これと Dynamics 365 を標準連携させることで、ガートナー社が提唱する「コンポーザブル ERP」の考え方の実現が容易になります。これにより業務領域ごとに自社に最適なソリューションを選択しやすくなるのです。この連携は、2023 年 8 月に発表されています。
また 2023 年 12 月には、HUE と Microsoft Teams との連携も実現されています。これによって HUE からの重要な通知を Teams のチャット経由で PC やタブレット、スマートフォンなどで受け取ることが可能になったのです。
「当社のほとんどのお客様は大手企業ですが、その中には日常業務に Teams を使っているところが多く、HUE と Teams の連携はお客様の生産性向上に大きな貢献を果たすはずです」と外村 氏。また Dynamics 365 との連携についても、顧客からの「HUE Asset と組み合わせたい」というニーズに対応したものだと説明します。
「もちろん ERP 市場という枠の中で見れば、HUE と Dynamics 365 は競合製品という位置付けになりますが、お客様の視点から見ればパートナーになるべきです。このような考え方に対して、マイクロソフトは非常にオープンな姿勢で応えてくれました」 (外村 氏)。
生成 AI も積極的に活用し、顧客が「AI-Ready」になることを支援
これらの活動と並行して、生成 AI への取り組みも積極的に展開。2023 年 4 月には Azure OpenAI Service の社内環境の整備に着手しており、同年末に社内リリースしています。この機能を顧客に提供する、という取り組みも既に始まっています。これは Azure OpenAI Service の生成 AI モデルを、製品マニュアルや過去の Q&A などのナレッジにグラウンディングさせ、ユーザーの質問にチャットで回答できるようにしたものです。このように生成 AI を用いることで HUE を利用するユーザーの利便性を高めるための取り組みを進めています。
その一方で「Copilot for Microsoft 365 と HUE を連携するプラグインの開発も進めています」と言うのは菊地 氏です。「当社のお客様である日本の大手企業では、Microsoft 365 上に組織のナレッジが蓄積されているケースが多いため、それらのデータを活用できる Copilot for Microsoft 365 は高い潜在能力を持っています。これに加えて、HUE と Copilot をプラグインにより連携させることで、お客様は組織のナレッジと HUE のデータを統合して活用できるようになるため、これまでにない業務効率化が実現できると考えています」。この連携は、ユーザーが Microsoft Teams などの普段利用しているアプリケーションから Copilot を通じて HUE のデータにアクセスし業務を遂行することが可能となるため、ERP の UX を根本的に変えていくような取り組みです。
さらに、顧客の AI 活用やデータ活用の基盤を確立するため、Microsoft Fabric の社内試行も行われています。「HUE はカスタマイズ不要なのが強みですが、それ故にデータがきれいに整っており、Fabric を活用したデータ活用も容易です」と外村 氏。既に一部の顧客には、Fabric を活用したデータ基盤の整備を提案し始めていると言います。
顧客環境を AI-Ready にするだけでなく、ワークスアプリケーションズ社内でも AI の活用を推進しており、先述した Azure OpenAI Service を活用した製品 Q&A 回答の効率化だけでなく、製品開発部門では、GitHub Copilot の利用が進められています。開発生産性の向上に加えて、オンボーディング早期化などの効果も見込めると評価されており、今後は GitHub Copilot Enterprise における組織のコードベースを理解した提案についてもトライアルを検討されています。
「私たちが最終的に目指すのは、企業の生産性を極限まで高めることで、働くことの意味を変えていくことです」と宮原 氏。そのツールとして、生成 AI は重要や役割を果たすことになると指摘します。
「国産 ERP を提供しているのもお客様のルーティンワークをなくすためですが、生成 AI の進歩が加速したことで、目標を一気に達成できる可能性が高くなりました。これからもマイクロソフトが提供するさまざまな AI をフル活用しながら、お客様が “AI-Ready” になることをご支援していきたいと考えています」。
“生成 AI の進歩が加速したことで、目標を一気に達成できる可能性が高くなりました。これからもマイクロソフトが提供するさまざまな AI をフル活用しながら、お客様が “AI-Ready” になることをご支援していきたいと考えています”
宮原 雅彦 氏, 取締役 執行役員, 株式会社ワークスアプリケーションズ
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